OECHSLERはどのようにして100日間でRiddell社ヘルメットライナーの設計から連続生産まで辿り着いたか

重要なポイント

  • OECHSLERは、Carbonプリンタを大量に保有する大規模ユーザーの1社であり、3大陸に渡り計150台以上のCarbon L1プリンタを保有
  • OECHSLERはCarbon技術を活用し、たった100日間で数十万ものパーツを生産しRiddellに納品
  • CarbonのDLS™技術による3DプリントプロセスはOECHESLERに、マスカスタマイゼーション、部品の統合、柔軟性という利点を提供

 

競争力ある企業の条件のひとつは、製品の迅速な市場投入が可能なことです。積層造形業界で最大の部品メーカーのひとつであるOECHSLERは1864年以来、まさにその能力を顧客に提供してきました。ドイツ本社に加え、アジアと北米に拠点を持つOECHSLERは、部品製造を通じて顧客ビジネスの価値を高めることを可能とします。

アディティブ・マニュファクチャリングは近年、最終製品を製造するための技術として注目を集めていますが、OECHESLERは、2010年には既にアディティブ・マニュファクチャリングへの投資を始めていたパイオニアです。今やOECHESLER は、世界中の拠点に約200台もの3Dプリンタを保有するだけでなく、多くの大手3Dプリンタ企業との豊富な経験を持ち合わせています。

3Dプリンティング技術によりOECHSLERは、卓越した品質と製造速度、コスト削減を実現する、広範な部品を顧客に提供できるようになりました。製造業者が、アディティブ・マニュファクチャリングでの連続製造事業を海外に拡大しようとすると、グローバルに、迅速かつ着実に増産しながら部品を製造する3Dプリンティングソリューションが必要でした。OECHSLERは、CarbonのL1プリンタにより、完璧なソリューションを見出したのです。

 

Carbon DLSにより結実したパートナーシップ

OECHSLERは2017年にCarbonとの提携を開始し、その後、保有するL1プリンタを150台以上まで拡大させ、世界で最も多くのCarbonプリンタを保有する企業のひとつとなりました。ドイツと中国では500トン以上の樹脂を消費し、200万を超える部品を製造しています。

CarbonのDigital Light Synthesis™(DLS™)と呼ばれる3Dプリンティング技術は、マスカスタマイゼーションや部品の統合、柔軟性等、従来の製造方法と比べ、多くの利点をOECHSLERに提供しました。OECHSTERはCarbonのDLS™技術を使うことにより、2つの異なる大陸で高品質の最終製品を製造しました。また、生産を拡大しながら更に迅速に対応することにより、より大型の量産プロジェクトの実現にも繋げています。

「OECHSLERでは、大量の連続生産を含め、速くて柔軟性のあるソリューションが我々の業界の未来だと信じています。3DプリンティングとCarbon技術の性能を追い込みながら、私たちがどれだけ速く、柔軟になることができるかという限界を再定義しているのです。」

Adam Jones
Oechsler オペレーション担当副社長

グローバルに分散した拠点のメリット

2019年12月、OECHSLERのチームは、カリフォルニア州レッドウッドシティーにあるCarbonの本社を訪問し、RiddellとSpeedFlex Diamondヘルメットの商用発売に向けたプロジェクトを開始しました。Riddellは、ヘルメットのライナーを3ヶ月で納入することを求めました。これは、どのメーカーにとっても大事業でしたが、OECHSLERは、自分たちがノウハウと経験を持ち合わせていることを理解していました。アディティブ・マニュファクチャリングを想定したヘルメットライナーを設計することにより、OECHSLERは完全に機能する試作品をただちに作成しました。CarbonとRiddellの初回ミーティングから100日も経たないうちに、OECHSLERは連続生産を開始したのです。

製品の量産開始までのスケジュールが十分にタイトであったため、その納期に対応するためには、OECHSLERは生産拠点ごとの強みと機能を活用する必要がありました。ドイツ本社では、チームが材料やプロセス、製品に関する豊富な知識を駆使して、生産を迅速に立ち上げました。その間に、中国とドイツそれぞれが保有する大量のCarbon L1プリンタ群を一元化することにより、OECHSLERは驚異的な生産能力増強が可能となったのです。COVID-19が発生するまでは、全ては計画通りに進んでいたのです。

 

パンデミック時の戦略転換

パンデミック最中では、OECHSLERは製造戦略について再考する必要がありました。通常、OECHSLERのスペシャリストは、拠点現地に出張して生産を監督します。しかし、渡航制限により不可能となりました。3つのタイムゾーンにまたがるチーム間の歩調を合わせることは困難でしたが、このプロジェクトを成功させるためには不可欠でした。OECHSLERは自社の確立されたコミュニケーションとプロジェクト管理システムを頼りとし、プロセス開発、検証、試験、工業化、および最適化に際して、CarbonおよびRiddellと緊密に協力し、プロジェクトの目標達成を目指したのです。

OECHSLERは、生産プロセスの工業化に関する課題への対応に精通していたため、パンデミックによる制限を回避する方法を簡単に見出すことができました。OECHSLERは全拠点共通の品質基準への取り組みにより、各拠点が同様の品質基準と精確な性能を有する製品を提供できるよう、プロセス全体への対策を講じました。

プロジェクト開始時にOECHSLERはファイルを検証し、ヘルメットライナーの設計とパラメーターが一貫した連続生産結果をもたらすことを確認しました。Carbonのソフトウェアにより製造業者は、生産全体にわたる製品やプロセスのパフォーマンスを、簡単に追跡し共有することができました。3大陸で稼働する全てのプリンタのリアルタイムデータが単一のダッシュボードに表示されるため、チーム間の連携が維持され、問題発生時のトラブル対応がより簡単になりました。Riddellに部品を納品する前に、OECHSLERは全数の圧縮試験を行い、部品とプロセスのパフォーマンスの最終検証を行いました。

 

OECHSLERがRiddellとのタッチダウンに成功

CarbonのDLS™技術は、OECHSLERの工業化の経験と組み合わせることにより、ヘルメットライナーの試作から3Dプリンタでの連続生産までを100日以内に移行することを可能としました。最初の100日の連続生産で、OECHSLERは数十万ものヘルメットライナーをRiddell製SpeedFlexダイヤモンドヘルメット向けに提供しました。今や、NFLの最高性能のヘルメットのひとつとしてラインクインしています

パンデミックはこのプロジェクトに多くの予期せぬ困難をもたらしましたが、CarbonのDLS™技術は、OECHSLERがドイツと中国の生産拠点間で同期をとり続けることを容易にしました。このプロジェクトは、手作業または金型をより多用する製造方法を採用していれば、はるかに困難なものになっていたことでしょう。パンデミックに関わる課題を乗り越えた経験は、OECHSLERとCarbonのパートナーシップを更に強化しました。

「CarbonのDLS™技術は、私たちのチームが100日以内に最初の造形から連続生産に移行し、次の100日以内には2つの大陸から部品を納品することを可能としました。この成果は、OECHSLERのコアコンピタンスの1つである迅速な工業化と、CarbonのDLS™によって可能となる柔軟性とスピードを浮き彫りにしました。」

Lena Rudel
Oechsler 技術管理統括部長

 

米国への生産拡大

プロジェクトの成功を受けてOECHSLERは、ジョージア州アトランタに新しく立ち上げたアディティブ・マニュファクチャリング施設にて、Riddell製SpeedFlexダイヤモンドヘルメットの次世代ヘルメットライナーの連続生産の準備を既に進めています。この新しい拠点の計画段階で、OECHSLERは既存の拠点から得られた洞察を反映し、それらを利用することにより機能を強化しました。米国の拠点が加わりグローバルプレゼンスが3大陸に拡大する中、OECHSLERは高速で柔軟な生産設備と、もちろん大量のCarbonプリンタにより、世界最大のアディティブ・マニュファクチャリング市場で顧客により良いサービスを提供することができるのです。