小児用3D造形気道ステント

気道ステントは、より侵襲的処置を受けている患者への代替手段として、気道の良性、がん性両方の病変の治療に使用される医療機器です。 ステント留置によって、日常生活に早く戻ることができます。但し、人口ベースの市場規模が比較的小さい子供向けに気道ステントが作られることはあまりありません。

子供の気管支軟化(気道壁の異常な軟化)は頻繁な入院の原因となり得て、場合によっては、慢性的な人工呼吸器治療が必要です。 成人用ステントは大きすぎるため、子供には使用できません。更には、子供が徐々に成長するにつれて、生理学的ニーズを満たすためには経時的により大きなステントが必要になります。複数のステントを徐々に子供の気道の成長に合わせて使用し、入院する必要を減らすのが理想的な小児用気道ステントソリューションとなります。

この問題の解決策を模索するミネソタ小児病院の研究者たちは、CarbonのDigital Light Synthesis™技術とシリコン(SIL 30)材料を活用して、3Dプリントによる気道ステントを製作するアプローチを開発しました。これは前臨床試験でテストされる予定です。

 

開発

3Dプリントは、小児向けに必要な異なる様々なサイズに対応する機器を実現する優れたツールです。ミネソタ小児病院の Dr. Robroy Maclverの研究グループは、成人サイズに達しステント交換が不要になるまで、子供の成長に合わせて簡単に交換できる気道ステント製作の調査を開始しました。研究が進むにつれて、積層技術を用いる全ての従来式3Dプリント技術では気道の動的動作に関連する機能仕様を満たせないため、すぐ失敗してしまうことが判明しました。ステントの失敗は許容できないため、研究者たちは精度向上と、より柔軟な材料を実現する堅牢な技術ソリューションを必要としていました。

 

「Carbon 材料SIL 30は、等方性のスムーズな表面仕上げを実現し、気道の動作に持ちこたえる耐久性を備えています。そのため、小児用ステント留置の様々な展開技法に対応可能な耐久性と柔軟性のある機器を開発できました。」

Dr. Robroy Maclver
ミネソタ小児病院 先天性心臓外科医

 

ソリューション

CarbonのMシリーズプリンタとSIL 30樹脂は、この用途の厳しい仕様(小型、高解像度、スムーズさ、小さな気道に必要な信頼性ある部品品質)を満たしました(図1)。 独自設計のステントには、十分な半径方向圧縮強度を維持しつつ、低硬度に関する厳しい仕様が要求されました。 Carbon 3Dマニュファクチュアリングソリューションは、経時的に必要とされる複数の機器サイズを実現できる反復的なデザインアプローチを可能にしました。 これにより、柔軟なステント機器が開発され、ステントを気道内に留置する様々な展開技法にも対応可能となったのです。

図1:Carbon プリンタMシリーズとSIL 30で製作した様々なサイズの3D造形気道ステント

 

利点

呼吸器系の小児先天性欠損症への取り組みにおける課題は、患者となる子供たちによって様々です。各ステントはCarbon技術によって、子供ごとの気道の厚み、長さ、直径に合わせて調整できます。小児患者で特に重要なことは、子供の成長に合わせて、ステントを新しいものに交換できる点です。

 

まとめ

研究者たちは、前臨床試験用の新しい気道ステントを開発しました。これは、Carbon MシリーズプリンタとSIL 30樹脂によって実現しました。 Carbon技術は、堅牢な材料特性と調整可能なデザインを組み合わせて、オーダーメイドの機器の可能性を広げます。

注:医療機器用途におけるCarbonプリンタと材料の使用は、使用制限条項含めたサブスクリプション契約で定める諸条件に従います。CarbonのSIL 30樹脂は、ISO 10993-5およびISO 10993-10に準拠して生体適合性のテストが実施されています。埋め込み型機器用途において、前臨床試験から臨床試験へと進める場合には、更に追加的な試験が必要です。